特別講演
特別講演1

光藤 祐基 様(Sony Group Corporation)
AI for Creators: Pushing Creative Abilities to the Next Level
概要:
近年、日本のコンテンツ産業は、音楽・アニメ・映像・ゲームを中心に、輸出産業の第二の柱として大きな期待を集めている。一方で、生成AIの急速な進展は、創作支援や新たな表現を可能にする一方、知的財産権の侵害、作風模倣、学習データの記憶逆流といった課題も顕在化させている。 本講演では、この変化に向き合うための二つの柱として、創作を拡張する Creative AI と、クリエイターや権利者を守る Protective AI を論じる。前者は新たな表現、制作効率、グローバル展開を加速し、後者は 知的財産権の侵害の抑制、作風模倣の制御、記憶逆流の抑制 を通じて持続可能な創作生態系を支える。日本のコンテンツ産業が世界市場で競争力を高めるためには、生成能力の強化だけでなく、創作の価値そのものを守る技術基盤を両輪として発展させることが不可欠である。
略歴:
東京大学で情報理工学博士号を取得。米ニューヨーク大学の客員研究教授を兼任。元東工大特任准教授。2025年に米国スタンフォード大学とエルゼビア社による「世界トップ2%科学者」に選出された。現在はソニーグループで機械学習分野のDistinguished Engineerを務める。
特別講演2

高木 啓伸 様(日本科学未来館 副館長/慶應義塾大学大学院特任教授)
視覚障害者のためのナビゲーションロボット「AIスーツケース」
概要:
人が街を歩くためには、歩道や障害物、他の歩行者を認識して安全に移動し、曲がり角やサインを確認しながら目的地に向かう必要がある。しかし、視覚障害者にとって、こうした視覚的情報を得ることは容易ではなく、既存の手段を用いても、自立して自由に移動することには多くの困難が伴う。 私たちは、視覚障害者が安全に目的地まで自立的に移動する新たな手段として、自律型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」の開発を進めてきた。利用者はAIスーツケースに付いて歩くだけで目的地へ向かうことができ、生成AIを活用することで、周囲の状況を音声で説明し、視覚情報を補うこともできる。 本講演では、AIスーツケース開発の背景と、ロボット技術による実現方法を紹介する。また、大阪・関西万博や日本科学未来館での実証実験を通して得られたユーザーからの期待の声を紹介し、社会実装に向けた技術面・制度面・ビジネス面の課題と、今後の可能性について述べる。
略歴:
慶應義塾大学大学院理工学研究科特任教授と日本科学未来館副館長を兼務。博士(理学)。1999年に日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所に入所以来、アクセシビリティに関する研究開発を主導してきた。研究分野は、ウェブアクセシビリティ、クラウドソーシング、ヘルスケア、実世界におけるアクセシビリティシステムなど。2002年および2009年にACM ASSETS Best Paper Awardを受賞。2011年に文部科学大臣表彰を受賞。近年は、視覚障害者の自立的な移動を支援する自律型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」の研究開発に取り組み、日常利用に向けた社会実装を目指している。